セッション
アンドリュー・ニーマンは19歳のジャズ・ドラマーである。若くして才能に恵まれるニーマンは、バディ・リッチのような「偉大な」ドラマーになることに憧れ、アメリカで最高の音楽学校、シェイファー音楽学校へと進学していた。壮大ながらも獏とした夢を抱えながら、日々孤独に練習に打ち込むニーマン。ティーン・エイジャーらしく恋愛にも憧れ、父と「男の争い」(Rifif)を観に行った映画館で働いている大学生のニコルに恋愛感情を抱きながらも声をかけられずにいた。そんなある日、シェイファー音楽学校の中でも最高の指揮者として名高いテレンス・フレッチャーが彼の学ぶ初等教室へやってくる。ニーマンの卓越した演奏はフレッチャーの目を引き、彼はシェイファーの最高峰であるフレッチャーのスタジオ・バンドに招かれる事になった。同時に映画館で働いてるニコルとも交際を初め、有頂天になるニーマン。しかし練習初日、スタジオに現れたニーマンは、フレッチャーの登場とともに異様な緊張感に包まれるメンバーたちの様子に違和感を覚える。開始早々、怒声を浴びせられ、泣きながら退場させられるバンドメンバーを目にして度肝を抜かれるニーマン。そんなニーマンをなだめるように、フレッチャーは温かく迎え入れるような態度をとったが、それはフェイクだった。フレッチャーはバンドのセッションに関しては徹底した完璧主義者であり、度を越した苛烈な指導を容赦なくバンドメンバーに対して行っていたのである。初日からニーマンもその対象となった。ハンク・レヴィ(en)の『Whiplash』を練習している最中に、テンポがずれているという理由で椅子を投げつけられ、さらには、バンドメンバーの目の前で屈辱的な言葉を浴びせられながら、頬を殴りつけられる。彼は泣きながらうつむくほかになかった。
理不尽な暴力を受けながらも、フレッチャーを見返そうと再起するニーマン。利用できる全ての時間を練習に費やし、更には時間の無駄になるという理由でニコルと別れることになった。「どのみちニコルとは別れることになるはずだ。偉大なドラマーになるという夢を叶えようとすることは、恋愛に割ける時間も少なくせざるを得ないからだ。ニコルはそんな僕に愛想をつかすだろう。」と考えたのである。しかし、文字通り血の滲むような特訓を繰り返しながらも、ニーマンは補欠としてコアドラマーの楽譜めくりの扱いしか与えられなかった。しかしあるとき、大事な舞台でコア・ドラマーの楽譜をなくしてしまったニーマンは、記憶を便りに自分が「Whiplash」を演奏することとなる。演奏は完璧で、フレッチャーはニーマンをコア・ドラマーに格上げする。これを誇りに思うニーマンをよそに、彼の親戚たちは、俗物的な価値観からニーマンのドラムへの情熱を軽視する。これは、ますますニーマンを世俗的な考えから遠のかせ、ドラムへの病的なまでの執着へと駆り立てていくことになった。しかしフレッチャーは、明らかにニーマンのほうが優れているにもかかわらず、初等教室でニーマンと一緒に学んでいたドラマー、ライアンにメイン・ドラマーの地位を与え、ニーマンを補欠ドラマーへと降格する。到底納得出来ず、ついには声を荒らげてフレッチャーに食ってかかるニーマン。偉大なドラマーになることへの強い執着と猛特訓によって培われたニーマンの自負心は、かつて彼が震え上がったフレッチャーの逆鱗すら無視できるほどのものになっていたのであった。
来る重要なコンペティションを前に、指導に現れたフレッチャーは昔の教え子だったショーン・ケイシーが自動車事故で亡くなったことをバンドのメンバーに伝える。ショーンを悼んで涙を流すフレッチャーに衝撃を受けるニーマン。しかし、これに続く指導は苛烈なものとなった。ドラマー三名に極端に早いテンポでのドラム演奏を要求するフレッチャー。彼は、自分を納得させることができる演奏が聴けるまで三名に演奏を続けさせることを宣言する。数時間にも及ぶ演奏の末、ドラムセットはドラマー達の手から流れ落ちる血で血まみれになるが、ニーマンただ一人がこれを最後まで演奏してのける。フレッチャーは最終的にニーマンの腕前を認めざるを得なくなる。
そうして迎えたコンペティション当日。会場へ向かう途中、バスが故障してしまい、レンタカーを借りるが遅刻をしてしまった上にドラムのスティックをレンタカーのお店のところに忘れたのでもう一度戻ってしまった。しかし会場へ戻る最中にトラックと事故にあい、車が横転し、自身も血まみれになるするほどの大事故に巻き込まれる。執念で開演直前に会場に辿り着いたニーマンは、そのまま舞台で演奏することを選ぶ。しかし、怪我の影響で満足な演奏は出来ず、ついにはスティックを落としてしまい、演奏は惨憺たる結果に終わる。ニーマンの必死の体を見ながらも、冷酷に「お前は終わりだ」と宣言するフレッチャー。この言葉に激昂したニーマンはフレッチャーに殴りかかり、会場から退去させられる。
この騒動を受けて、ニーマンはシェイファー音楽学校を退学になる。ニーマンの父親ジムはショーン・ケイシーの代理人を務める弁護士と接触する。弁護士は二人に、ケイシーは事故で死んだのではなく、自殺したのだと明かす。ケイシーはフレッチャーの指導を受けるようになってから、鬱に悩まされるようになったのだという。弁護士は、ケイシーの両親はフレッチャーを直接訴えることは出来ないが、ニーマンの協力でフレッチャーを辞めさせる事はできると彼に持ちかける。フレッチャーを辞めさせることで、二度と彼の体罰に遭う生徒が現れないようにできるのだ、と。自身の受けていた仕打ちにもかかわらず、フレッチャーの資質を認めていたことから、当初はこれを是としなかったニーマンだが、自身のドラムへの情熱が消えてしまったことで、やがて自暴自棄になり、これを呑むことになる。フレッチャーから受けた体罰について匿名で証言し、フレッチャーは音楽学校を辞めさせられる。
数か月後の夏、ニューヨークでドラッグストアの店員として働きはじめたニーマンは、静かで幸福でありながらもどこか満ち足りない毎日を送っていた。そんな中、フレッチャーがあるジャズクラブでピアノの演奏者として出演しているのを偶然見つける。観客の中にニーマンを見つけたフレッチャーは彼を引き止め、酒を飲みながら二人は話をする。初めてかつての自分の振舞を弁明するフレッチャー。「自分が学生を殴るのは、彼らにジャズ界の伝説になってほしいと願うからだ。自分の仕事はバンドを前に腕を振ることではない。偉大なミュージシャンを育てることだ。かつて、ヘマをやらかしたチャーリー・パーカーに、ジョー・ジョーンズはシンバルを投げつけた。しかし、それがパーカーの克己心に火をつけ、彼を偉大にした。自分のやったことに後悔はない。」と。「よくやった」と生ぬるく褒めそやすことで、第二のチャーリー・パーカーの才能を殺すことこそが悲劇だ、と。やがて、フレッチャーは来るJVC音楽祭でバンドの指揮を執ること、曲目はシェイファー時代のレパートリーと同様であること、現在のバンドのドラマーの質が十分ではないことをニーマンに告げ、彼に代役を務めることを持ちかける。初めて見せるフレッチャーの率直さに感銘を受けたこともあり、ニーマンはドラムへの情熱を取り戻し、これを受けることにするのだった。ニーマンはニコルをこの音楽祭に招待するが、彼女はすでに他の彼氏を作っていたためそれを断った。
そして、JVC音楽祭当日を迎える。スカウトマン達が集まる公演でフレッチャーはニーマンにだけ嘘の演目を与え彼の知らない曲を演奏させ、自らの公演を失敗させる事によってニーマンに復讐する。それに対してニーマンは「次はスローな演目を」という曲紹介を遮りアグレッシブな演奏を始め、キャラバンをフレッチャーを含めた他のバンドマンが演奏させざるを得ない状況を作り出した。ニーマンの演奏が終わった時、フレッチャーとニーマンは互いに笑みを交し合っていた。
アンドリュー・ニーマン - マイルズ・テラー(内田夕夜)
テレンス・フレッチャー - J・K・シモンズ(壤晴彦)
ジム・ニーマン - ポール・ライザー(佐々木敏)
ニコル - メリッサ・ブノワ(横山友香)
ライアン・コノリー - オースティン・ストウェル(赤坂柾之)
カール・タナー - ネイト・ラング(須藤翔)
フランクおじさん - クリス・マルケイ
Mr.クラマー - デイモン・ガプトン
エマおばさん - スアンヌ・スポーク
寮の隣人 - マックス・カッシュ
ダスティン - チャーリー・イアン
トラヴィス - ジェイソン・ブレア
グレッグ - コフィ・シリボー
ソフィー - カヴィタ・パティル
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