夏子の冒険
【送料無料】 決定版 三島由紀夫全集 2 長編小説 / 三島由紀夫 ミシマユキオ 【全集・双書】 |
20歳の松浦夏子は、ある朝、突然朝食の食卓で、「あたくし修道院へ入る」と家族に宣言した。美しい夏子には降るように男たちから申し込みがある。しかし、大学法学部の助手も、社長の御曹司も、建築家志望や芸術家志望の青年も誰一人、死の危険を冒したり、愛のために命を賭けたりするような情熱も持っていない、ありきたりな出世を望む退屈な青年ばかりだった。処女の夏子は、いくら探しても望む男がいない以上、神に仕えて浮世と絶縁して、憧れていた北海道函館市にあるトラピスト修道院で暮そうという結論に達したのだった。家族はもちろん猛反対だったが、自殺未遂までやらかす頑固な夏子に押され、入会後半年間の志願期はいつでも脱退できることを知った父はやむなく承諾した。
夏子の母、伯母、祖母が付き添って北海道の函館へと旅立った。ふと夏子は上野駅で、猟銃を背負い、目の輝きが他の人と違う青年を見かけた。彼は夏子と同じ青森から出帆した青函連絡船にも乗っていた。二人は甲板で言葉を交わし、次の日、函館で会う流れになった。彼・井田毅は一昨年、千歳に近いアイヌ部落・蘭越コタンで知り合った16歳の和人の少女・秋子と結婚を誓い帰京したが、その直後、秋子は無残にも熊に手足をバラバラにされ殺されてしまったのだった。毅はその四本指の人喰い熊を仇討ちするために、休暇をとって再び北海道に来たのだった。夏子は毅の話を聞いて、自分も熊退治について行くと言い出した。最初は何とか夏子をまこうとした毅だったが、決心のゆらがない夏子に根負けし、お供させることとなった。
一方、函館の宿に残された母、伯母、祖母は夏子の失踪に慌てふためき、彼女が定期的に宿に打つ電報をたよりに夏子捜索の珍道中の旅に出ることとなった。夏子は途中、白老のY牧場の厩舎番牧夫の娘・16歳の不二子に嫉妬しながらも、毅と恋仲になっていき、熊を仕留めたら結婚することを約束した。やがて二人を追って、猟友会の札幌支部長・黒川や夏子の母たち、札幌タイムス社の野口も蘭越近くの村のコタナイへやって来た。一行は村長別宅に集まり、熊が出そうなコースの確認や計画を練った。夏子も村田銃を持ち、毅と一緒に家の裏手の緬羊小屋を見張った。母、伯母、祖母らが村長別宅に残り、茶菓子などを食べている時、熊が家の中に入って来た。彼女らは失神してしまったが、熊はそのまま家を出て緬羊小屋に来た。そして毅が見事、四本指の大熊を仕留めた。
一件落着し、母たちも毅と夏子の結婚に大賛成し、二人は幸せだった。しかし、帰りの船の甲板で毅が話すことは、重役になったらアメリカに行こう、自動車を買おうなどという凡庸な所帯じみた将来の結婚生活の夢であった。夏子はロビーに行き荷物から時間表を取り出し、函館行きの船の時間を調べ始めた。そして、いぶかる母たち三人に向かって、「夏子、やっぱり修道院へ入る」と言った。
松浦夏子:角梨枝子
井田毅:若原雅夫
夏子の祖母・かよ:東山千栄子
夏子の伯母・逸子:村瀬幸子
夏子の父:北龍二
夏子の母・光子:岸輝子
大牛田秋子:淡路恵子
野口:高橋貞二
不二子:桂木洋子
成瀬:伊沢一郎
大牛田十造:坂本武
【映画】 【動画】 【洋画】 【邦画】 【ドラマ】
映画→ 動画→ 洋画→ 邦画