リトル・フォレスト 冬・春
【楽天ブックスならいつでも送料無料】リトル・フォレスト 冬・春【Blu-ray】 [ 橋本愛 ] |
冬
いち子の母は時折訪れる外国人の客人のために赤と緑の2色の生地に分かれたクリスマスケーキを焼くことがあった。いち子は自分なりにアレンジして黒米の甘酒とカボチャで紫と黄色のケーキを焼き、キッコとユウ太を招いて「年忘れお茶会」をする。正月を迎える頃の一番の御馳走は、分校の餅つき大会で食べる、つきたての砂糖醤油仕立ての納豆もちで、分校が閉校になった今は家庭のもちつき機でつきたてを楽しむ。小森の冬は深い雪に覆われ雪かきに追われる厳しいものだが、外気で凍らせた凍み大根や秋から保存する干し柿をおいしくするのも冬の寒さである。いち子は街にいた頃、節約のために部屋でラディッシュを育てた。バイト先の男の子のために味噌焼きおにぎりと母直伝の卵焼き、ラディッシュの即席漬けで弁当を作るが、彼が他の女の子からもらった手編みのマフラーをバカにしているのを聞いて渡せないまま終わった思い出がある。ストレスを感じたときは甘い餡子入りおやきや饅頭、アズキのマフィンを作って食べ解消するが、タイミングが大切なアズキ栽培や餡子作りに、いち子は昔小森を出るのが早すぎたのだと思う。ある日いち子はキッコに他人と向きあって来なかったことを指摘され気まずさを抱えたまま、ふと思いついて小麦ふすま入りのはっとを作り[注 2]、寝かせながら雪かきに出かける。家に帰るとキッコは仲直りに手作りのカレーを持ってきて、いち子ははっとの生地をチャパティ風に焼き、二人で一緒に食べる。冬に食べるための塩漬けのワラビが足りなくなり、いち子は自分は働き者の小森の人々と違って「かばねやみ」(怠け者)なのだと思う。ユウ太にも、大事なことから目を逸らしていると指摘されてしまう。冬の空はいち子の心のように、青空と黒い雲の二つに割れている。
春
小森の春は梅や桜の満開とともに山菜の旬と田植えの季節が一度にやってくる。いち子も山へ入り、タランボなどを摘んで天ぷらにする。しかし春になっても大雪に見舞われることがある。母が失踪したときも大雪だったのに、いち子は雪かきを手伝わず、ばっけを摘んでおいてくれるよう頼んで出かけた。母はばっけ味噌を残して家を出た。いち子は一人になってからの労働の大変さに母の苦労を想い、自分は母にとって本当に家族といえたのだろうかと考える。春は雑草として耕作の邪魔になるつくしを山ほど採って佃煮にするが、下ごしらえの苦労にひきかえできあがる量は僅かである。それでも自然の恵みといってロマンを語るユウ太に対し、いち子は自分はこういう男性に弱いと思う。薪割りの手伝いにきたキッコに、いち子はノビルと結球しなかった白菜の蕾菜、塩マスでパスタを作ってふるまい、その後キッコが薪割りをしながら語る職場の愚痴を聞く。キッコは山から下りた祖父に悪口を叱られ気が抜けるが、ストレスは解消する。いち子は、シンプルな味付けやかき揚げがおいしい春キャベツでケーキ作りを思いつく。世界初の発想と思い込み有頂天になったいち子だが、味見したユウ太の感想は「お好み焼き」だった。失踪前、母はジャガイモを混ぜたパンが得意だったがいち子には20歳になるまで作り方を教えないと言った。秋に届いた手紙には失踪の言い訳と近況が書かれていたが、パンのレシピはなく、人生は同じところを廻るようで円ではなく螺旋状なのだというようなことが綴られていた。いち子は秋に収穫するジャガイモを今年は植えないと決意し、小森を離れる。その後いち子が残したタマネギの畑を守るキッコとユウ太は、街でも自分の居場所を見つけて戻ってくるくらいでないと小森に失礼だからといって去った彼女のことを、すぐに戻って来るだろうと語り合う。
5年後、いち子は結婚相手とともに小森に帰ってきて、キッコはユウ太との間に子どもをもうけている。旧分校のステージで、いち子が人々の前で神楽舞を披露し、それに全編からの場面を重ねて物語は終わり、エンドロールは小森の人々の日常生活を映して終了する。
いち子 - 橋本愛
ユウ太 - 三浦貴大
キッコ - 松岡茉優
シゲユキ - 温水洋一
福子 - 桐島かれん
ウィリアム - イアン・ムーア(冬編のみ)
キッコの祖父 - 岩手太郎(春編のみ)
キッコの祖母 - 北上奈緒
近所の主婦1 - 佐藤さち子
近所の主婦2 - 千葉登喜代
郵便屋 - 小島康志(冬編のみ)
いち子(小 学生) - 篠川桃音
キッコ(小 学生) - 照井麻友(冬編のみ)
スーパーのアルバイト男性 - 栗原吾郎(冬編のみ)
アルバイトA - 坂場元(冬編のみ)
アルバイトB - 渡辺佑太朗(冬編のみ)
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