旅役者
真夏の暑い盛り。うらぶれた信州路の田舎町に、「六代目菊五郎一座」がやってきた。人々は「菊五郎」といえば、「尾上」菊五郎だと思い込むが、もちろんそうではない。当地にやってくるのは「中村」菊五郎(高勢)の一座だった。この一座の当たり狂言は「塩原多助」。馬の役を務めるのは俵六(藤原)と仙平(柳谷)のコンビである。俵六は芸熱心で“日本一の馬の脚”をもって任じて、氷屋の娘(山根)に講釈を垂れている。興行師の若狭屋(御橋)と北進館(深見)はこれを利用して大儲けしようと、町の顔役・床甚(中村)の親方に、さも本物の「尾上」菊五郎が来るように言って資金を出させる。ところが、一座を歓迎する宴会の席で、一座の正体を知った床甚は酔って暴れ、楽屋に入り込んで、着ぐるみの馬の頭を踏みつけて壊してしまう。一方、俵六は宴会の席で芸者(清川虹子)に馬の脚を演じる難しさについてまたも講釈をしている。床甚は壊れた馬の頭を提灯屋に直させるが、修繕を終えた馬の顔を見ると馬というより狐にそっくり。これではとても演れないと俵六はごねる。興行はひとまず菊五郎の急病ということで中止にするが、困り果てた若狭屋たちは曲馬団にいた本物の馬を連れてきてこれを使うことにした。ところがそれが大当たり。気をよくした菊五郎は、今後は本物の馬を使うと言う。そして今後は仙平は人間の役を、俵六は馬の番人になれと言い渡す。機嫌を損ねた俵六は、昼間から焼け酒を煽る。芸者たちに冷やかされ、俺の芸を見ろと仙平と馬の支度を整えると、狐の顔をした着ぐるみで馬の芝居を始める。ところが調子づいて本物の馬を挑発したため、驚いた馬は逃げ出してしまう。俵六と仙平の着ぐるみの馬は、それを追って町を飛び出していくのだった。
藤原鶏太 市川俵六
柳谷寛 中村仙太
高勢実乗 中村菊五郎
清川荘司 市川七右衛門
御橋公 若狭屋
深見泰三 北進館主人
中村是好 床甚
山根寿子 氷屋の娘
清川玉枝 小料理屋の女・お光
伊勢杉子 小料理屋の女・お咲
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