泥の河
蛍川・泥の河 (新潮文庫) (1994/11/30) 宮本 輝 商品詳細を見る |
朝鮮動乱の新特需を足場に高度経済成長へと向かおうとしていた昭和三十一年。河っぷちの食堂に毎日立ち寄っていた荷車のオッチャンが事故で死んだ。朝、食堂の息子・信雄は置き去りにされた荷車から鉄屑を盗もうとしていた少年、喜一に出会う。喜一は対岸に繋がれているみすぼらしい船に住んでおり信雄は銀子という優しい姉にも会う。信雄の父・晋平は夜にあの船に行ってはいけないと言う。しかし父母は姉弟を夕食に呼んで暖かくもてなした。楽しみにしていた天神祭りがきた。初めてお金を持って祭りに出た信雄と喜一は人込みでそれを落としてしまう。しょげた信雄を楽しませようと喜一は強引に船の家に誘った。泥の河に突きさした竹箒に宝物の蟹の巣があった。 喜一はランプの油に蟹をつけ火をつけて遊ぶ。蟹は船べりを逃げ蟹を追った信雄は窓から喜一の母の姿を見た。裸の男の背が暗がりに動いていた。次の日、喜一の船は岸を離れた。「きっちゃーん!」と呼びながら追い続けた信雄は、悲しみの感情をはじめて自分の人生に結びつけたのである。船は何十年後かの繁栄と現在の絶望とを象徴するようにビルの暗い谷間へと消えていく。
田村高廣板倉晋平
藤田弓子板倉貞子
朝原靖貴板倉信雄
加賀まりこ松本笙子
柴田真生子松本銀子
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